Contents

目次

  1. 財産分与をした人の税金についてのまとめ
  2. 財産分与を受けた人の税金についてのまとめ
  3. 財産分与をした財産が不動産の場合
  4. 財産分与を受けた人に贈与税が課税される場合とは
  5. 第二次納税義務について
  6. まとめ

1.財産分与をした人の税金についてのまとめ

  1. 財産分与による資産の移転は譲渡になります。
  2. 財産分与した財産が金銭の場合には、所得税等の課税はありません。
  3. 財産分与した財産が不動産の場合には、譲渡所得の課税が行われます。

 

2.財産分与を受けた人の税金についてのまとめ

  1. 慰謝料として受け取った金銭については、所得税は課税されません。
  2. (原則)財産分与により取得した財産については、原則として贈与税は課税されません。
  3. (例外)財産分与により取得した財産が過当であると認められる場合のその過当な部分や贈与税や相続税の課税のがれを図るものと認められる場合の財産分与により取得した財産については、贈与により取得したものとみなされます。

3.財産分与をした財産が不動産の場合

上記1のとおり、財産分与をした財産が不動産など譲渡所得の基因となる資産の場合には、譲渡所得の課税が行われます。財産分与をした時に、その時の価額によりその資産を譲渡したことになります。

3-1 譲渡所得はどのように計算するか

譲渡所得及び譲渡所得税は次の算式により計算されます。

  1. 譲渡所得=譲渡収入金額-取得費及び譲渡費用
  2. 譲渡所得税=譲渡所得×税率

3-2 譲渡収入金額はどうなるか

財産分与により不動産を渡した場合の譲渡収入金額は、財産分与をした時の価額(時価)となります。時価の算出については、その資産の客観的な価額である必要があり、鑑定等によって算出することが考えられます。

3-3 取得費

財産分与をした不動産の取得費は、土地については取得価額、建物については、取得価額から減価償却費相当額を控除した金額となります。

3-4 3000万円控除の特例について

マイホーム居住の用に供している建物や土地などを譲渡した場合には、譲渡所得の金額から3000万円の特別控除をすることができる特例があります。ただし、配偶者その他の親族に対する譲渡については、特別控除は適用できません。しかし、離婚による財産分与は離婚により夫婦関係が終了した後にされるものであるため、配偶者に対する譲渡に該当しないことになります。したがって、その他の要件を満たしている場合には、特別控除の適用が認められます。

3-5 居住用財産の軽減税率の特例について

居住用財産の所有期間が10を超える場合には、居住用財産の軽減税率の特例があります。この特例についても3-4と同様の取扱となります。

3-6 離婚前に財産分与があった場合

離婚が行われると、戸籍の除籍手続きが行われますが、離婚前(戸籍の除籍手続前)に財産分与があっても、その後速やかに除籍手続きが行われた場合には、その譲渡は財産分与時ではなく除籍後に行われたものと考えられるため、3-4の3000万円の特別控除の特例や3-5の居住用財産の軽減税率の特例の適用は認められます。

4.財産分与を受けた人に贈与税が課税される場合とは

上記1のとおり、財産分与を受けた人には、原則として贈与税が課税されることはありません。なお、財産分与の金額が過当かどうか、いくらが相当な金額なのかについては、婚姻期間や離婚に至る経緯など様々な事情を総合的に勘案して決められるべきであるとされています。このあたりの論点が争われたものとして、次のような裁決等があります。

平成25年7月4日裁決 国税不服審判所

平成10年4月14日判決 最高裁判所

平成7年3月30日裁決 国税不服審判所

5.第二次納税義務について

第二次納税義務とは、本来の納税義務者が税金を滞納している場合に、その納税義務者に滞納処分をしても満足な租税の確保ができないと認められるときに、その納税義務者と一定の関係がある第三者に納税義務を負わすことができる制度です。この制度の中に、「無償又は著しい低額の譲受人等」を対象者として、第二次納税義務を課す規定があります。「無償又は著しく低い対価による譲渡」に該当するかどうかは、上記4の裁決等で争われています。

6.まとめ

離婚による財産分与の際には、税金に関する観点が必要不可欠です。不動産を財産分与した場合には、金銭を受け取っていないのにも関わらず、譲渡所得税の負担が生じるケースがあるため、売却して現金化したうえで財産分与を行うなども有効な方法かもしれません。また、3000万円の特別控除などの特例は、申告することで適用できる規定のため、所得税の確定申告が必要となります。


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