今朝の日本経済新聞に、「自営業者の事業承継を支援するための、相続税の優遇措置を拡大する」という記事がありました。内容を見ていくと、「土地だけではなく、建物、機械、車などの設備の評価を通常よりも減額する」、「納税時期を繰り延べる」ことを検討していくようです。なお、この優遇措置は、法人の形態をとらず「個人で事業を営む自営業者を対象」とするとあります。
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土地についての相続税の特例
土地については、相続税の計算上、特例が設けられています。
この記事のような、自営業者が事業を行っている建物上の土地については、事業継続などの要件を満たした場合、400㎡(約121坪)を上限として、評価額から80%減額され、20%の評価となります。
<具体例>
相続税評価額 5,000万円 200㎡(約60坪)→ 1,000万円(5,000万円×20%)
この特例は、亡くなった方の事業を承継した人の生活基盤を維持するために設けられています。
建物の相続時の評価
建物の相続税の計算上の評価は、次のようになります。
固定資産税評価額×1.0
固定資産税評価額とは、市町村が、固定資産税を計算するために設定する金額です。建物の構造などに基づいて設定され、おおむね、建築した金額の60%程度といわれています。
今回の優遇措置では、この金額から、土地のように減額する特例を設けることが想定されます。
機械、車などの相続時の評価
機械や車などはの評価は、一言でいうと、「相続が発生した時に、それを売ったらいくらか」つまり、時価という観点から評価を行っていきます。ただし、機械などは時価が分からないケースも多いので、実務上は、定率法に基づく減価償却を行った後の金額での評価となります。
これについても、土地のように減額する特例を設けることが想定されます。
対象となるのは自営業者
今回の優遇措置では、「個人で事業を営む自営業者が対象」とあります。法人としての形態は除かれています。個人で事業を始めても、売上が伸びてきた場合に、法人化するケースが多くみられます。法人化のメリットは、次のようなものがあります。
・信用面が個人と比べて格段に大きい
・自分に給料を支払えるようになり、「給与所得控除」という概算経費の控除を使える
・家族などへの給料の支払いが個人事業よりは柔軟に行うことができる
・保険などで節税を図ることができる
ただし、税金面から見ると、売上などの規模によっては、個人事業のままの方が良いケースもあるので、事前の検討が必要になります。今回は個人事業者ですから、そこまで規模が大きくない事業者を想定しているのかもしれません。
優遇措置の意図は?
この優遇措置の意図は、相続税の非課税枠である基礎控除額が縮小されたことに対する、手当のようです。あくまでこれから議論する段階ですので、この優遇措置が行われるかどうかは分かりません。
相続税の生前対策
今までは相続税が関係なかったけれども、今後は対象となる人が増える見通しです。今回の優遇措置以外にも、生前に行うことができる相続対策はたくさんあります。早めの行動が大事です。
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