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内縁の妻に相続分はあるか

民法では、内縁の妻に相続分を原則として認めておりません。相続人になれる配偶者というのは、婚姻届を提出することによる法的な婚姻関係がある者です。婚姻届を提出していない内縁の夫または妻は、同居していても、生計維持関係があっても、相続人にはなれません。社会保険では、生計維持関係があれば内縁の夫または妻にも遺族年金が支給されることもありますが、相続においては、何十年にわたって事実上の夫婦として生計が一緒であっても、相続する権利はありません。

内縁の妻に財産を残すためには

内縁の妻に財産を残すには、いくつかの方法が考えられます。

  1. 婚姻
    法律上の夫婦となることで、配偶者としての地位を得ることができます。相続税の計算においても、各種特例の適用対象となります。
  2. 遺言を作成する
    遺言書では内縁の妻はもちろん、法定相続人以外のまったくの第三者でも財産を取得させることができます。ただし、相続人がいる場合には、遺留分に注意が必要となります。
  3. 死因贈与契約をする
    内縁の妻との間で死因贈与契約を行います。贈与者である内縁の夫の死亡によって贈与の効果が発生します。相続税の計算上は、遺贈によって取得した場合と同様となります。
  4. 特別縁故者
    相続人がいない場合には、特別縁故者として財産を取得できる可能性があります。
  5. 生前贈与を行う
    多額の贈与税が生ずる可能性があります。

なお、内縁の妻が相続税の申告をする際には、下記の事項に注意が必要となります。

配偶者の税額軽減の適用

配偶者には、1億6,000万円又は法定相続分の1/2までの取得のいずれか多い方の金額までについては、相続税がかからない特例があります。この特例は、相続後の配偶者の生活保障などを目的として設けれていますが、適用できるのは婚姻の届け出をした者である配偶者であるため、内縁の妻には適用できません。

小規模宅地等の特例

小規模宅地等の特例は、土地の課税価格を最大80%減額することができる特例です。

小規模宅地等の特例は、「個人が相続又は遺贈により取得した財産」と規定されており、相続人以外の者が遺贈により取得した財産、つまり遺言によって取得した財産についても適用されます。

しかし、小規模宅地等の特例には、特定事業用(被相続人が事業を営んでいた場合など)、特定居住用(被相続人の自宅など)、貸付事業用(被相続人がアパート経営などをしていた土地など)などがありますが、いずれも、取得者が親族であることが要件となっています。内縁の妻は被相続人の親族には該当しませんので、内縁の妻が取得した財産については、小規模宅地等の特例は適用できません。

生命保険金の非課税

保険会社によっては、内縁の妻を死亡保険金の受取人とすることができます。

通常、被相続人が保険料を支払っていて、被相続人の死亡によって相続人が受け取った死亡保険金については、一定額まで非課税とする取り扱いがありますが、内縁の妻は相続人ではないため、内縁の妻が取得した死亡保険金については、非課税の適用はありません。

相続税の2割加算

相続又は遺贈によって財産を取得した人が、1親等の血族(被相続人の配偶者、子、父母)以外の者である場合には、その者の相続税は、2割加算されます。内縁の妻は1親等の血族ではないため、相続税が2割増となります。

基礎控除額

内縁の妻は相続人ではないため、基礎控除額の算式には含まれません。
※基礎控除額=3,000万円+600万円×法定相続人の数(平成27年1月1日以降の相続)

仮に、相続人がゼロの場合は、基礎控除額は3,000万円となります。

障害者控除

相続人が85歳未満で、かつ障害者である場合には、相続税の額から一定の金額を控除できます。
この規定は、法定相続人であることが要件の一つであるため、内縁の妻に障害者控除の適用はありません。

内縁の妻のために

相続税を考えると、内縁の妻には相続税を少なくする様々な特例が適用できないため、婚姻をすることが財産を守ることにつながります。

ただし、様々な事情により婚姻することが難しいケースも多いと思います。その際には、遺言書を作成しておくことが最もスムーズかつ確実な方法であるといえます。また、内縁の妻に相続人がいない場合は、遺言などで内縁の妻に財産を取得させた後、内縁の妻に相続が発生した場合の問題もあります。信託を活用することも有効な方法となります。


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