不動産オーナーの法人を活用した相続対策 では、賃貸建物を法人へ移転することで、相続対策を図ります。
同じように、賃貸建物を親から子などへ贈与することで、相続対策を図ることができます。
Contents
アパートの建物だけを贈与する
賃貸用アパートの土地と建物、それぞれを贈与すると、土地の評価額が高いため、贈与税の負担が高額になります。
そこで、建物だけの贈与を検討します。
建物の評価は、時価の70%ぐらいを目安に設定されている固定資産税評価額です。
賃貸用アパートのように、貸家の場合には、固定資産税評価額から借家権割合30%を減額して評価します。
賃貸用アパートの評価額=固定資産税評価額×(1-30%)
相続対策の効果
賃貸用アパートを贈与した場合の効果は次のようになります。
所得税の節税効果
賃貸用アパートの建物が親から子に移転するため、家賃収入は子のものになります。
所得税は累進税率によって課税されるため、親と子に所得が分散されることで、税率の軽減効果があります。
<具体例>
- 贈与する建物から生じる所得は600万円
- 贈与する建物以外の親の所得は1,700万円
- 子の所得は200万円
贈与前の親の所得は2,300万円(600万円+1,700万円)のため、所得税と住民税の税率の合計は50%です。
贈与する建物から生じる所得600万円に対する税金は、600万円×50%=300万円となっています。
贈与後の子の所得は800万円(600万円+200万円)となり、所得税と住民税の税率の合計は33%です。
贈与した建物から生じる所得に対する税金は、600万円×33%=198万円となりました。
つまり、この建物から生じる所得に対する税金が、102万円(300万円―198万円)節税できたことになります。
相続が発生するまでの期間が長ければ長いほど、「102万円×相続までの期間」として節税できることになります。
さらに、このケースでは、贈与後の親の所得は1,700万円のため、累進税率の関係で、所得税と住民税の税率の合計は43%になり、移転しない親の所得1,700万円に対する税金も軽減されました。
1,700万円×50%=850万円 → 1,700万円×33%=561万円
相続財産の増加抑制効果
本来親の財産として増加していくはずであった所得が、親から子に移転したため、相続財産の増加抑制効果があります。
仮に贈与してから10年後に相続が発生した場合には、6,000万円(600万円×10年)の相続財産の増加を抑制できたことになり、相続税の税率が50%であれば、3,000万円(6,000万円×50%)の相続税を節税できたことになります。
このように、相続が発生するまでの時間が長ければ長いほど、節税効果は大きくなります。
相続税の納税資金確保
相続財産の増加抑制効果と同額を子において、現金の蓄積ができることになります。この現金は将来の相続税の納税資金の原資にすることができます。
相続が発生した際の評価も考慮する
贈与前は、土地の所有者=建物の所有者のため、この状態で相続が発生した際には、土地の評価を貸家建付地として評価することができ、一般的に18%~21%土地の評価額を減額することができます。
ところが建物の贈与後は、土地は親、建物は子となり、賃貸アパートの入居者が入れ替わって場合には、貸家建付地としての減額ができなくなります。
これを避けるため、贈与前に管理会社や同族法人にサブリースとしておくことで、贈与時の賃貸借契約が継続することになります。
相続に関する無料相談を行っております。
相続税の相談、遺産相続の相談は、東京、新宿の大橋相続税理士事務所へ。
投稿者プロフィール
最新の投稿
- 相続2017.03.27【平成29年度版】7月の路線価発表前に路線価を予測する【渋谷区】
- 相続2016.12.16平成27年分の相続税の申告状況について
- 相続2016.12.02相続税の申告状況、税務調査の状況について(平成27事務年度)
- 相続税2016.10.03世田谷区の相続税における土地評価