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非課税枠を活用する
被相続人が死亡したときに、相続人が保険金を受け取ると、本来は被相続人の財産ではありませんが、みなし相続財産として相続税がかかります。しかし、この生命保険金には、一定額の非課税枠(相続税がかからない枠)が設けられており、その計算は次の算式によって計算します。
【設例】
相続人:妻と長男、長女
生命保険金の非課税枠=500万円×3人=1,500万円
生命保険金の非課税枠を活用した具体例
分かりやすくするために支払保険料と死亡保険金は同じ金額とします。
生命保険を活用しなかった場合 | 生命保険を活用した場合 | |
現預金 | 1億円 | 1億円 |
支払保険料 | 0円 | 2,000万円 |
相続時の現金 | 1億円 | 8,000万円 |
死亡保険金 | 0円 | 2,000万円 |
保険金受領後の現預金 | 1億円 | 1億円 |
非課税枠(法定相続人4人) | 0円 | ▲2,000万円 |
相続税の課税対象 | 1億円 | 8,000万円 |
上記相続税の課税対象 に対する相続税(最大) |
5,500万円 | 4,400万円 |
保険金受領後の現預金は、どちらも同じ1億円です。
ところが、保険金の非課税枠によって、相続税の課税対象は2,000万円もの違いが出ています。
相続税で考えると、最大1,100万円(2,000万円×55%)の相続税の節税を図れることになります。
納税資金や代償金としての活用
相続税は、原則として申告期限までに現金で一括で支払わなければなりません。
地主様や会社の社長などに相続が発生した場合、相続財産のほとんどが不動産や会社の株式など、処分が難しい財産だと、相続税が生じた場合に納税資金に困る場合があります。
このような時に、生命保険に加入することにより、残された相続人に保険金として現金が支払われるため、納税資金を確保することができます。
また、分けることが難しい財産が多い場合などの代償金として活用することもできます。
保険金に対する税金を節税する相続対策
死亡保険金には非課税枠がありますが、非課税枠を超える部分は、相続税の課税対象となります。
【設例】
✔死亡保険金:3,000万円
✔非課税枠 :1,500万円
✔相続税の課税対象:3,000万円―1,500万円=1,500万円
✔死亡保険金部分の相続税:最大825万円(1,500万円×55%)
現状の保険契約は次のようになっています。
✔保険契約者:親
✔保険料の支払者:親
✔被保険者:親
✔保険金受取人:子
そこで、次のような相続税対策を行います。
<1>相続税の対象となる保険金は、非課税枠の範囲内にする。(上記の場合は1,500万円)
<2>保険金1,500万円の次の契約を行う
✔保険契約者:子
✔保険料の支払者:子
✔被保険者:父や母
✔保険金受取人:
相続税対策の流れ
- ①親から子へ保険料相当額の現金の贈与を行う
- 年間110万円の基礎控除を活用することで、贈与税の節税が可能。
- ②子が保険料を支払う
- 子が保険に加入して、保険契約者として保険料を払う。
<前提>保険料は1,000万円、年間100万円
- ③親の死亡により子は保険金を受け取る
- この場合の保険金は、相続税の課税対象ではなく、子の所得税の課税対象。
- ④保険金に対する税金
- (給付された保険金―払込保険料の合計額―50万円)×1/2×所得税率
この相続対策のポイントは④の税金の計算です。
仮に子の所得税率が33%の場合は、
(1,500万円―1,000万円―50万円)×1/2×33%=約74万円(復興税及び住民税は未考慮)
上記の前提で、825万円―74万円=751万円 の節税が行えることになります。
上記はあくまでも、仮定の計算であるため、相続税の課税対象となる親の財産の金額、受け取る保険金の金額、子の所得の金額によって、節税効果は異なるため、詳細なシュミレーションを行う必要があります。
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