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法人を活用した相続対策

賃貸不動産を多く所有するオーナーの悩みは、毎年の多額な不動産所得による所得税の負担です。

また、毎年の賃料収入の蓄積によって、将来相続税の対象となる相続財産が、確実に増加しています。

このような状況にある不動産オーナーについて、賃貸建物を移転することによって、次のような効果を得ることができます。

①不動産オーナーの所得税の負担が減少する

 


②不動産オーナーの相続財産の増加が抑制される

個人と法人どちらが有利か

ここでは、不動産オーナーが、既存の法人又は新たに法人を設立して、賃貸建物を法人に移転したケースを見てみます。

<移転対象の賃貸建物>

収入から経費を引いた所得が1,000万円

※個人の税負担は所得税、住民税の最高税率55%、法人の税率は33%とする。

個人の税負担
1,000万円×55%=550万円が税金
法人の税負担
1,000万円×33%=330万円が税金
対策による節税額
550万円―330万円=220万円が節税できた金額

さらに、相続が20年後だと仮定して、相続財産の増加抑制という点から見てみると、

現状の増加額

1,000万円―550万円=450万円×20年=9,000万円

賃貸建物を法人へ移転することによって、賃料収入も不動産オーナーから法人に移転するため、9,000万円の相続財産の増加を防止できたことになります。

所得分散、給与所得控除を活用した節税

先ほどの例で法人の税負担は、1,000万円×33%=330万円でした。

法人が役員に給与を支払うことによって、さらに節税を図ることができます。

1,000万円―500万円(役員報酬)=500万円×33%=165万円

役員報酬には所得税がかかりますが、給与を複数人に支払って分散することにより、所得税の負担を少なくすることが可能となります(所得分散)。

また、給与に対する所得税には、給与の金額に応じた控除額(給与所得控除)があるため、所得税の負担を少なくすることができます。

個人から法人への建物移転

不動産オーナーから法人へ建物を売却する際には、通常の場合は帳簿価額が目安となります。

帳簿価額での売却であれば、不動産オーナーに譲渡所得税の負担は生じませんが、次のような移転コストが生じます。

消費税

登録免許税(固定資産税評価額×2%)

不動産取得税(固定資産税評価額×3%又は4%)

また、移転する建物に個人の借入金が残っている場合には、借入を法人が引き継ぐなどの対応が必要となります。

いずれにしても、税理士などの専門家に相談して法人を活用した節税を計画的に行うことが得策といえます。