相続税の納税資金確保のため、相続によって取得した不動産を売却することがあります。

相続によって取得した不動産を相続人が売却した場合は、通常と異なる有利な取扱いがあります。

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不動産の売却による税金

不動産を売却した場合には、次の算式によって譲渡所得税が生じます。

①譲渡所得=譲渡収入金額―取得費―譲渡費用

②譲渡所得税=譲渡所得×税率(14%、20%、39%のいずれか。復興特別所得税は未考慮。)

これを分かりやすく説明すると、次のようになります。

売ったことによる利益=売れた金額―売った不動産の購入価額―売る際に生じた費用

②税金=売ったことによる利益×税率

つまり、売ったことによる利益が少なければ、税金も少なくなります。

なお、取得費が不明の場合には、譲渡収入金額の5%を取得費とみなして計算を行います。

相続によって取得した不動産の取得費

相続によって取得した場合の取得費はどのようになるのでしょうか。

相続税の申告をした際の評価額を使えるのでしょうか?
相続税評価額は、相続税を計算する際の金額のため、取得費にはなりません。
固定資産税の評価額を使えるのでしょうか?
固定資産税評価額は、固定資産税等を計算するために定められる金額のため、取得費にはなりません。

取得費とは、次の合計額とされています。

  • 不動産を購入したときの購入代金
  • 購入にかかる一定の諸費用
  • 購入後に支払った改良費、設備費

相続によって取得した不動産の取得費は、被相続人の取得費を引き継いで計算を行います。

分かりやすく言うと、「被相続人が昔に買った金額」を引き継ぎます。

ただし、先祖代々相続によって引き継がれてきた土地などは、取得費が不明のケースが多く、譲渡収入金額の5%が取得費となるケースが多く見受けられます。

相続によって取得した不動産の特例

支払った相続税の一部を、売却による所得税の計算上、取得費に加算することができます。

取得費に加算する=売ったことによる利益が少なくなる

そのため、売却にかかる譲渡所得税等が軽減され、相続税の納税資金の確保にもつながります。

なお、この制度は一般的に「取得費加算の特例」と呼ばれています。

特例の適用を受けることができる場合

特例が適用できる要件は次の2点です。

  • 相続税の申告期限の翌日から3年以内に売却すること(申告期限前の売却を含みます。)
  • 相続又は遺贈によって財産を取得し、その財産を取得し、売却した人に相続税が課税されていること

相続税の計算上、配偶者の税額軽減等の適用によって、納付する相続税が生じない方については、

取得費に加算できる金額は生じないことになります。

取得費に加算できる金額

平成26年度税制改正によって、取得費に加算できる金額が異なります。

注意すべき点は、いつ売却したかではなく、いつ相続等によって取得したのか、です。

平成26年12月31日までに発生した相続等によって取得した不動産の譲渡の場合

〔改正の取得費加算額〕

   (a)×(c)/(b)
 
 (a):譲渡者の相続税額
 (b):譲渡者の相続税額に係る課税価格
 (c):(b)の内、土地等に係る部分の合計額

 

平成27年1月1日以後に発生した相続等によって取得した不動産の譲渡の場合

〔改正の取得費加算額〕

   (a)×(c)/(b)
 
 (a):譲渡者の相続税額
 (b):譲渡者の相続税額に係る課税価格
 (c):(b)の内、譲渡した土地等に係る部分の価額

改正前は、譲渡していない土地等に対応する部分の相続税額も取得費に加算する事が可能でした。

平成26年度税制改正により、取得費に加算される相続税額は、その譲渡した土地等に対応する部分のみに縮減される事となりました。

相続対策としての特例の活用例

土地などの取得費が不明の場合には、取得費が譲渡収入金額の5%として計算されるため、多額の譲渡所得税等が課税されます。

相続財産に不動産が多い場合には、この特例を活用することで、譲渡所得税等の軽減が期待できます。

相続税の納税資金確保のために、土地など不動産の売却を検討する場合には、

生前に売却するのか、相続が発生した後に売却してこの特例を使うのか、売却による税負担を考慮して検討すべきです。


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